油化学
Online ISSN : 1884-2003
ISSN-L : 0513-398X
微孔性疎水性薄膜型バイオリアクターを用いたリパーゼによるオリブ油の連続加水分解の速度論
油脂関連化合物の酵素的変換のためのバイオリアクター (第6報)
山根 恒夫モハメド-モザメル ホック清水 祥一
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1986 年 35 巻 1 号 p. 10-17

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抄録

微孔性疎水性薄膜型バイオリアクター (平膜型と中空糸モジュール型) を用いて, Candida cylindracea生リパーゼによるオリブ油の連続加水分解の速度論を研究した。「表面相」における反応に可逆ミハエリス・メンテンの式を適用し, 油脂の流れを押し出し流れと仮定して, バイオリアクター出口の反応率を表す一般式を導いた。この式の極限として, 一次反応式の場合と, 零次反応式の場合と, 細孔内拡散律速の場合についても解析した。これらの理論的考察によると, 油脂の供給流量, F, をバイオリアクター内の総膜面積, A, で割った値, F/A, がこの種の薄膜型バイオリアクターの性能を決める重要なパラメーターであることがわかった。異なる3つの研究者グループによって報告された油脂の回分加水分解のデータを解析したところ, 油脂の加水分解は可逆一次反応速度式に従うことがわかった。平膜型バイオリアクターを使って著者らが先に得た実験データも可逆一次反応速度式による結果と一致したが, 中空糸型バイオリアクターによる実験データは, F/Aが高い領域のみ可逆一次反応速度式による結果と一致した。最後に, 薄膜型バイオリアクターシステムの性能と乳化系の性能を比較する基準として, 「相当油滴径」という新しい概念を提出した。

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