スクシンイミドエステルの化学 (第7報)

N-スクシンイミジルベンゾエートによる牛血清アルブミンの化学修飾 (N-アリールカルボニル化)

抄録

N-スクシンイミジルベンゾエート (1) による牛血清アルブミン (BSA) の化学修飾 (N-アリールカルボニル化) を25℃, 7.0≦pH≦9.0で速度論的に検討した。N-アリールカルボニル化の初速度はV=k₂ [BSA] [1] で示すことができた。メタ置換 (1) の二次速度定数, k₂はハメットのσ値とほぼ相関性を示し, ρ値は正であった。しかし, オルト置換 (1) の速度はその立体障害のため, (1) に相当する安息香酸の強さから期待するものよりも遅かった。BSAのアミノ基は等価でないためpHプロフィールの傾きは1以下であつた。速度比, 10^-3k₂/k_{1, d} [ここで, k_{1, d}は (1) の分解の一次速度定数を示す] はすべての場合に1よりも大きかった。メタ置換 (1) 及びo-F- (1) では, 速度比はpH8.5で最大値を示したが, o-Cl-及びBr- (1) ではpHの増加とともに速度比は減少した。以上の結果から, (1) がタンパク質のLys残基の修飾 (N-アリールカルボニル化) 剤として利用できることが分かった。