1987 年 36 巻 8 号 p. 561-564
リパーゼによる油脂のグリセロリシス反応に関して, 微孔性疎水性薄膜型バイオリアクターのスケールアップを試みた。平膜型反応器の1ユニットとそれを積み重ねた多層反応器とを用い, Pseudomonas fluorescensのリパーゼによるオリブ油の連続グリセロリシス反応を実施した。膜面積は0.0726m2から1.16m2まで変えた (16倍のスケールアップ) 。また, 油の供給に関して2通りの操作方式, すなわち平行流と直列流, を比較検討した。膜面積の違いや供給方法の違いによらず (油の流量/一枚の膜の面積) 対 (反応率) の関係は一定であったし, (油の流量/一枚の膜の面積) 対 (出口反応液中のモノグリセリド及びジグリドの組成) の関係も一定であった。したがつて, 同一仕様の膜と同一構造のユニットを積層する限り, (油流量/総膜面積) を基準にしてスケールアップが可能であると示唆された。グリセリン (酵素を含む) 中の水分が2.6%程度でも, 出口反応液の酸価は供給オリブ油よりも少し高い値を示した。