抄録
フミン酸とアントラキノン分散染料の相互作用について検討した。海底堆積物から抽出したフミン酸と市販のフミン酸を用いてほとんど水に溶けない染料を可溶化した。フミン酸溶液への染料の溶解量はいわゆるフラスコ振とう法によって測定した。フミン酸溶液への染料溶解量はフミン酸濃度と共に増加し, Aldrichフミン酸溶液で増加は顕著であった。塩の添加は溶解量を減少させるが, その影響は複雑であった。染料の溶解量は温度が上昇すると増加するが, 特に海洋フミン酸の0.1%溶液で高温で増加が大きかった。フミン酸溶液に可溶化された染料のスペクトルは変化し, ポリアミノアントラキノンの1, 4・異性体に特有のツインピークが消え, ブロードな1つのピークとなった。この事はフミン酸と相互作用する染料は石英上に析出した固体状の染料と同じ状態であることを示唆する。温度の影響及びスペクトル変化から, フミン酸と染料との相互作用は分配類似のプロセスで起こることが示唆されるがフミン酸の構造や組成の要素も考えられる。