油化学
Online ISSN : 1884-2003
ISSN-L : 0513-398X
各種アルキル鎖長をもった遷移金属錯体の化学
宮村 一夫
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1992 年 41 巻 10 号 p. 1021-1024

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抄録

一言で化学と言ってもその対象は広く, 森羅万象, 変化を伴うものはおよそすべてが対象である。対象の広さ故か, 化学では有機化学, 無機化学といった主として研究対象による便宜的な分類がある。扱う結合から考えると, 有機化学が共有結合の化学とすれば, 無機化学はイオン結合, 錯体化学は配位結合の化学と言えるだろう。そして, 最近は微弱な変化を検出・計測する手法の進歩もあり, 比較的弱い結合である分子間力の化学が注目されている。
錯体化学の分野においても例えばミセル等の会合体中での金属錯体の挙動, 金属錯体自体の会合挙動等の研究を通して, 分子間力を積極的に利用し, 錯体に新しい機能を付与する試みが行われている。これは生物無機化学の研究の進展に負うところが大きい。光合成, 膜タンパク等の研究から, 分子間力による高次構造の規制が生体反応系で見られる高い選択性, 特異性の発現に重要な役割を果たしていることが分かってきたためである。金属錯体に長鎖を導入するという試みもまた長鎖部分の相互作用による会合, 配向規制を期待している。このような試みについて「長鎖を有する金属錯体」の題で総説を書いてから十年以上の月日が流れたので本編では, 簡単な解説と最近の関連する文献の紹介を行いたい。

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