油化学
Online ISSN : 1884-2003
ISSN-L : 0513-398X
加工油脂のコレステロール代謝に及ぼす影響 (第4報)
パームステアリンの影響と, 影響に及ぼす大豆油との混合及びエステル交換の効果
村上 千秋知見 憲次兼松 弘新谷 〓水谷 治夫平井 長一郎
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1992 年 41 巻 3 号 p. 196-202

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抄録

パームステアリン, 大豆油, 及びそれらの等量混合油 (PS/SO) とさらにランダムエステル交換したもの [(E)PS/SO] がそれぞれ20% (重量比) 含まれる飼料で4群の幼若雄ラットを28d飼育し, これらのラットの血清脂質並びに肝臓及びふん (糞) 中のコレステロールとその代謝生成物について比較試験を行った。併せて, それらの飼料油脂の物理的, 化学的性状についても試験した。
1) SFC曲線において, トリパルミチン主体のトリ飽和グリセリドが多いパームステアリンは, 30℃でもかなり硬いことを示した。しかし, 大豆油との混合及びさらにエステル交換することは, それぞれの段階でのSFCの低下により可塑性及び口融けが改善される結果となった。
2) 血清中の総コレステロール及びトリグリセリドの濃度は, 大豆油群と比較してパームステアリン群で有意に高かったが, PS/SO及び (E)PS/SOの両群で基本的に差がなかった。これに対し, パームステアリン, PS/SO及び (E)PS/SOの3群とも飼料油脂に豊富なC16 : 0は糞中への優先的排せつを示したが, その脂肪酸の肝臓脂質での割合はPS/SO及び (E)PS/SOの両群よりパームステアリン群で明らかに高かった。
3) 糞中のコレステロール及びその代謝生成物の多くは, いずれもパームステアリン, PS/SO及び (E)PS/SOの3群とも基本的に同じ含量を示したが, コプロスタノール及びデオキシコール酸のような腸内細菌の作用を受けて形成される代謝生成物の含量は他の2群よりパームステアリン群で低かった。また, 糞中のコレステロールに対するその代謝生成物の含量比はパームステアリン群のみ明らかに低いが, PS/SO及び (E)PS/SOの両群と大豆油群問に差がみられなかった。
4) その結果は, パームステアリンではC16 : 0 (パルミチン酸), 特にトリパルミチンが例外的に多いため, 恐らくC16 : 0の肝臓への取り込みが増すことにより血中コレステロールを上昇させるとともに腸内細菌の作用を抑制することによりコレステロール代謝に不利な影響を及ぼすと推測される。しかし, 液体植物油との混合及びさらにエステル交換を行うことにより物理的改質だけでなく, 生物学的にも改質し得ることが示唆された。

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