1993 年 42 巻 5 号 p. 359-365
我々が合成した極めて簡単な構造の糖脂質 3-アセチル-4-ジドデシルカルバモイル-2- (D-manno-ペンタヒドロキシペンチル) チアゾリジン; Man (Lau) 2 は結晶状のキチン, キトサンを今までにない穏和な条件で加水分解するキチナーゼ, キトサナーゼモデルとなる。本報ではさらに様々な糖残基を有する糖脂質を合成し, それを用いてキチン, キトサンの加水分解を行い, その分解活性と基質選択性について動力学的に調査した。その結果, 反応に用いたすべての糖脂質が加水分解反応を触媒することが明らかになり, 糖残基のヒドロキシル基の立体配置によって加水分解の程度に相違があることが確認できた。特にC-4位のヒドロキシル基の立体配置が加水分解の活性程度に大きく影響することが今回の結果より示唆された。一方キチンを基質選択的に加水分解する糖脂質は共通してその糖残基にメチル基のような疎水性部位が存在しており, ある種の糖脂質においてはキトサンの12倍ほど速くキチンを加水分解した。