フミン酸と疎水性化合物-ピレン, イコサン-との相互作用を溶解度の増加および蛍光の測定により調べた。フミン酸は海底堆積物から抽出したものおよび市販のものを用いた。
ピレンのフミン酸溶液への溶解度はいわゆるフラスコ法-分光光度法により測定したが, フミン酸濃度と共に増加した。塩の添加はピレンの溶解度を減少させ, 特にCsClで著しかった。フミン酸の溶解能をKsとして計算すると, 海洋フミン酸ではその界面活性に依存すると考えられる。ピレンとフミン酸との結合定数を蛍光消光法によりKbとして求めた。海洋フミン酸のKbは2.2~10.4×104L/kgであり, 市販フミン酸では8.1と8.4×104L/kgであった。これらの値はフミン酸の芳香族性と関連づけられる。ピレンの蛍光の強度比から, フミン酸を加えるとピレンに対し非極性の場所を提供することがわかった。フミン酸は非常に複雑な物質であるから, 異なる方法で得られた結果は異なる種類の相互作用を表している可能性もある。SJ-1フミン酸に対して 2種類の方法で得られた結果が異なるのは (Ksは最大であり, Kbは最小である), その特異な構造によるのであろう。