抄録
過酸化フルオロアルカノイルを合成中間体とした一連のフルオロアルキル基含有オリゴマー類の合成およびその性質に関して解説を行った。フルオロアルキル基含有アクリル酸,ノニオンおよびカチオン系オリゴマー類の合成方法を紹介した。これらフルオロアルキル基含有オリゴマーにおいて,特にフルオロアルキル基含有アクリル酸,ノニオンおよびカチオン系オリゴマーは,一般に水以外に,メタノール,エタノール,ジメチルスルホキシド,ベンゼン,トルエンに可溶となることが示された。これらフルオロアルキル基含有オリゴマー類は非常にユニークな構造,すなわちフルオロアルキル基がオリゴマー鎖の両末端のみに置換した構造をしており,この点から二鎖型の界面活性剤と見なすことができる。これらオリゴマーは,フルオロアルキル基に起因した優れた表面活性,すなわち表面および界面張力を著しく低下させることができ,さらには消泡性等の性質をも有する
フルオロアルキル基含有アクリル酸ホモおよびコオリゴマーはin vitroの系において有用な抗エイズ活性を示すことが見いだされた。さらに,フルオロアルキル基含有カチオン系オリゴマー類は抗菌活性を示すことが見いだされた。従って,これらフルオロアルキル基含有アクリル酸およびカチオン系オリゴマー類は,フッ素に起因したユニークな性質以外に,抗エイズ活性あるいは抗菌活性等の性質を有した新しい機能性材料として種々の分野へ幅広く展開させることができる。