日本油化学会誌
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カロテノイドの吸収・代謝
玉井 浩
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1996 年 45 巻 5 号 p. 391-397

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抄録

自然界には500種類以上のカロテノイドが存在し, ヒト血中でも10数種類以上が見い出されている。ヒトでのカロテノイドの吸収・代謝に関しては, まだ解決されていない点が多いが, 近年の分析機器の発展によって微量のカロテノイドが測定されるようになり, 詳細な検討がなされるようになった。
最近, all-transβ-caroteneの異性体である9-cisβ-caroteneの生体内動態が注目されている。動物モデルであるferretsではall-transβ-caroteneも9-cisβ-caroteneもともに, 腸管よりリンパ流に吸収されるが, 血清中で見い出されるのはほとんどがall-transβ-caroteneである。ヒトでも, β-caroteneはall-trans体が主体であり, 9-cis体はほとんど出現しない。しかし, 9-cis体は肝臓などの臓器をはじめ, リンパ球, 血小板中には血清中より高い比率で存在している。ヒトにβ-carotene (60mg) を長期間 (44週間) を投与すると, 血清中だけでなく, リンパ球, 血小板中にも増加し, 9カ月目には免疫細胞であるCD4とCD8の比 (CD4/CD8) が増加した。健常人でも免疫増強作用が確認されたことより, 後天性免疫不全ウイルス (HIV) 感染患者への有効性が期待される。ヒトのさまざまな病態においてカロテノイドの代謝は変化する。たとえば, 高脂血症を示す糖尿病や神経性食思症では高β-carotene血症を示し, 肥満症や低脂血症では低β-carotene血症を示す。β-caroteneの機能にはプロビタミンAとしての作用以外に抗酸化性, 免疫増強作用もあり, 各種病態との関係は興味深い。

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