日本油化学会誌
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新規ラクチドコポリマーの合成とそのプロテアーゼによる分解性
白浜 博幸水馬 潔志安田 源
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1996 年 45 巻 5 号 p. 459-466

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抄録

ポリ (L-ラクチド) [P (L-LA)] の固くてもろい性質と生分解性を改善する目的で, L-ラクチド (L-LA) と新規光学活性ラクトンである (R) -3-メチル-4-オキサ-6-ヘキサノリド [(R) -MOHEL] とから成る新しいラクチドコポリマ- [P (L-LA/ (R) -MOHEL)] を合成し, それらのプロテアーゼによる酵素分解性を検討した。比較用としてラクチド (L-及びD, L-体) と (R) -MOHELのホモポリマー [P (L-LA), P (DL-LA), P [(R) -MOHEL)] を用いた。
単独及び共重合は触媒に AlEt3-H20 (1 : 0.75) を用いて100℃で4~8h行った。示差走査熱量測定 (DSC) から, DL-LA, (R) -MOHEL, そしてL-LA含量約40mol%以下のコポリマーを除いて, 得られたポリマーは結晶性であることがわかった。コポリマーのL-LAユニット含量が約60 mol %以上であれば, ポリマーフィルムの融解温度 (Tm) をP (L-LA) に比べそれほど低下させることなく, もろさを改善することが可能であった。
用いた酵素 [ブロテアーゼ (プロメリン, プロナーゼ, プロティナーゼK) とコレステロールエステラーゼ] のうち, プロティナーゼKがラクチドホモポリマー (PLA) に対して最も高い分解性 (換言すれば, 基質特異性) を示した。非晶質P (DL-LA) の各酵素による分解性は結晶性P (L-LA) のそれよりも大きかった。しかし, P [(R) -MOHEL) はプロティナーゼK酵素によりほとんど分解されなかった。
L-LA含量約60mol%以上のコポリマーにおいては, プロティナーゼK酵素による分解性は (R) -MOHEL含量の増加に伴い増大した。これは, コポリマーの結晶化度 (またはTm) が (R) -MOHELの増加と共に減少するからと思われる。しかし, 過剰の (R) -MOHELユニットの導入は分解性を著しく低下させた [例えば, P (L-LA/ (R) -MOHEL= 29/71)] 。
プロティナーゼKによる分解前後の (コ) ポリマーの分子量及び熱的特性の変化から, 酵素分解はポリマー (フィルム) の表面から開始され, そして結晶部よりも非晶質部の方が起こりやすいことが明示された。

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