1996 年 45 巻 5 号 p. 453-457
水溶液中での塩化第二鉄によるp-クレゾールの酸化カップリング反応を, 酢酸エチル, クロロホルム, 及びヘキサンの存在下で行った。本反応の主な生成物は, o-o二量体, o-p二量体, 及びo-o三量体であるが, o-o二量体生成の選択性に対する有機溶媒の影響について検討を行った。全ての溶媒は三量体の生成を抑制し, 二量体生成の選択性を向上させることが認められた。有機溶媒は反応進行中において, o-o二量体をp-クレゾールモノマーよりも抽出しやすいが, 酸化剤であるFe3+イオンは水相にのみ存在するため, 二量体は酸化システムより効率的に除外される。酢酸エチルの添加は選択性向上には有効であるが, 添加量の増加とともに変換率が顕著に低下し, これはo-o二量体のみならずp-クレゾールモノマーも効果的に抽出されるためである。一方, ヘキサンは抽出力が弱いため, その変換率及び生成物の比率に対する影響は僅かであった。クロロホルムを添加した場合は, 変換率の大きな低下は起こらずに, 選択性が顕著に上昇することが認められた。この場合には, 反応中に生成されたo-o二量体は, ほぼ全てクロロホルム相中に抽出されているのに対し, p-クレゾールモノマーは, 酢酸エチルを添加した系と比較して, 水相中に存在しやすいことが見出された。