日本油化学会誌
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グリシルリチン酸塩の界面科学的挙動に関する研究
小出 操
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1998 年 47 巻 11 号 p. 1197-1206,1277

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抄録
甘草根に含まれるβ-グリシルリチン酸二カリウム (GK2) は, 親水的なグルクロン酸部と疎水トリテルペノイド骨格からなる三塩基酸で, 抗炎症や抗アレルギーなどの多彩な薬理作用を持つため, 医薬品や石鹸等に広く利用されている。しかし, GK2類の界面科学的特徴や挙動についてはほとんど研究されていない。本稿ではGK2類を有効に活用するため, GK2類の界面科学的性質, 人工膜モデルとの相互作用, 可溶化剤エステル系非イオン界面活性剤に対する加水分解触媒作用などについて検討した結果を紹介する。
GK2類やpHや疎水トリテルペノイド骨格の構造の違いにより特有のアニオン性ミセルを作り, 特にGK2がpH 5.5以下で形成する棒状ミセルはキャリアとして機能し, 塩基性薬物の膜透過性を促す。また, GK2類は非解離型のカルボキシル基を酸触媒の活性中心として, エステル系非イオン界面活性剤の加水分解を促進するが, 等モルのシクロデキストリンを添加してGK2類を包接することによって, この薬理的には好ましくない触媒活性が著しく軽減され, GK2類とNESとを医薬製剤に同時配合することが可能となった。その際, GK2類のトリテルペノイド部に位置するエノン基に由来する円二色性スペクトルの吸収強度が, ミクロ環境場の疎水度の指標となることを見いだした。
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