抄録
この研究は,長期間の食事性ジグリセリド摂取の人体脂肪に対する影響を検討するために行った。使用したDGの脂肪酸組成は,TGの脂肪酸組成と同じであった。健常男子(27~49歳)には,一日当たり50g(朝食として15g,昼食として15g及び夕食として20g)のTGを通常の食事として与えた。4週間のTG食の後,10gのDGまたはTGを朝食を与えるために被験者を二群に分けた。被験者は4週間毎に,最寄りの医療施設で,採血,身体計測及びCTスキャン(CT)による腹部脂肪量測定と肝脂肪量測定を行った。摂取後12週目において,DG食群ではTG食群と比較して,体重,BMI及びウエスト-ヒップ比が有意に低下した。DG食終了後において,腹部の体脂肪量はTG食終了後と比べてより減少していた。肝脂肪量の指標となる肝臓CT/脾臓CT比の結果から,肝脂肪量はTG食群と比較してDG食群で摂取後8及び12週目に有意に低下した。DG食群におけるDGの肝脂肪量の減少効果は,血清遊離脂肪酸の低下が大きかった被験者ほど明らかであった。一方,DG食群の血清ケトン体はTG食群と比べて上昇する傾向にあった。TG食群において,血清グルコース及びインスリンは有意に上昇したが,DG食群では試験期間中においてそれらは上昇しなかった。これらの結果から,DG食はインスリンの感受性を改善し,肝臓でのβ酸化を上昇させることによって内蔵及び肝臓の脂肪量を減少させているものと考えられた。DGはエネルギーとして利用されやすく,TGに比べて,血清インスリンや遊離脂肪酸を減少させ,低蓄積性の油脂であると考えられる。