抄録
コレステロールオキシダーゼ (CO) は, コレステロール代謝の鍵酵素であり, ステロイドの3位β水酸基の酸化, 5位二重結合の4位への異性化を同時に行う2機能性酵素である。COはBrebivacterium, Nocardia, Psuedomonas, RhodococcusやStreptomyces属等の多くの土壌微生物によって生産され, 種々の分野で利用されている産業用酵素である。今日では, 血清中のコレステロールの定量試薬として臨床検査キットなどに広く使われている。
COは広い基質特異性を有しており, コレステロール以外の多種のステロイド3位β水酸基に作用する。COは有機溶媒中でも安定であり, また最近ステロイド系以外の化合物の位置選択的, 立体選択的酸化にも利用され, リパーゼのような日常的な有機合成試薬としての利用が期待されている。Brebivacterium属由来のCOの3次元構造は既に明らかになっているが、その詳細な反応機構に関しては未だ充分な情報は得られていない。
COはワタノハナゾウムシなどの害虫に対し強い殺虫活性を持つことが最近明らかになり, 害虫抵抗性作物の育種のためCO遺伝子の植物細胞での発現が検討されている。また, チーズやヨーグルトなどの発酵食品中のコレステロール含量を低減させる目的で, CO遺伝子の乳酸菌での発現も研究されている。