日本油化学会誌
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塩化鉄 (III) -塩化水素錯体を用いたN-クロロアセトアニリド類のOrton転位
山本 二郎多田 宗広小島 秀和磯田 陽一郎
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1999 年 48 巻 5 号 p. 463-470,505

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抄録

N-クロロアセトアニリド (1) を塩化鉄 (III) -塩化水素錯体 (FeCl3-HCl) のエーテル溶液に溶かして室温で放置すると, 反応は30分で完結し, o-クロロアセトアニリド (10) とp-クロロアセトアニリド (11) が生成した。オルトーパラ比 (10/11) はFeCl3-HClの濃度に依存し, 最高0.64に達した。N-クロロ-2-メチルアセトアニリドからは2種類の, N-クロロ-3-メチルアセトアニリドからは3種類の転位生成物がそれぞれ見いだされた。
N-クロロ-2-メチルプロピオンアニリドとN-クロロ-2-メチルブチリルアニリドからも, N-クロロ-2-メチルアセトアニリドの場合と同様に, 相当するo-およびp-クロロアニリドが得られ, アシル基が長くなると反応がわずかに速くなった。
1の3種類の塩素誘導体はいずれもOrton転位が起こることなく, 相当するアニリドのみが得られた。メチル基と塩素をもつN-クロロアセトアニドとFeCl3-HClとの反応でも, Orton転位は進行せず脱塩素反応のみが進み, それぞれに相当するアセトアニリドが得られた。1と臭化鉄 (III) -臭化水素錯体 (FeBr3-HBr) との反応からは, 好収率でp-プロモアセトアニリドが生成した。
FeCl3-HClを用いた1のOrton転位では, パラ位は分子間転位で進行し, オルト位では分子間と分子内との転位が併発して反応が進行すると考えられる。

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