鳥類, 爬虫類, 貝類などの野生生物において生殖器の異常や集団規模の縮小が報告されているが, これらの変化は内分泌撹乱作用を持った環境化学物質によって引き起こされたのではないかと推測されている。これらの化学物質はまた, ヒトに対して有害な影響を及ぼすのではないかと危惧されている。ヒトに対する内分泌撹乱作用が疑われている化学物質には, プラスチックや洗剤の成分として大量に用いられているビスフェノールA, アルキルフェノール類, スチレンおよびフタル酸類, また, 廃棄物焼却の際に発生するダイオキシン類がある。酵母, 培養細胞およびげっ歯類を用いた
in vitroおよび
in vivoでの実験では, ビスフェノールAおよびアルキルフェノール類はエストロゲン作用を, また, ダイオキシン類は抗エストロゲン作用を持つことが示されている。しかし, ここで注意しなければならないのは, 現時点では, ヒトに対する内分泌撹乱作用を試験し, 評価するための適切で合意の得られた方法がないということである。
ここでは, まず, 内分泌系, 内分泌撹乱物質, およびその検出法について簡単な解説をした後に, 上記の化学物質について, 最近の知見をレビューする。そして最後に, 弱いエストロゲン作用を持った二つの化学物質による劇的な相乗作用の報告, そのすぐあとの撤回という最近のトピックを紹介する。
抄録全体を表示