日本油化学会誌
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マイワシ脳・肝臓中のセラミドモノヘキソシドとスルファチドの比較
田中 伸子岡村 浩
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1999 年 48 巻 7 号 p. 693-697,725

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抄録

スフィンゴ糖脂質の生体機能を解明するため, 動物種間の差異を比較することは有効な手法である。そこで脊椎動物詰の中で進化の度合が低い魚類の中からマイワシを取り上げ, 脳に高濃度に含まれていたセラミドモノヘキソシド (CMH) に注目しその分子構成をGLC分析により明らかにするとともに, 脳のスルファチド (CSE) や肝臓のCMHとの比較検討も行った。
マイワシ脳のCMHは哺乳類に比べ含有量が低く, 種特異性が認められた。脳のCSEやCMHの主要脂肪酸の炭素数は24であり, 構成脂肪酸の不飽和度は哺乳類よりも高かった (72.4%と67.5%) 。脳と逆に, 肝臓のCMHの脂肪酸は不飽和度は低かったが, ヒドロキシ脂肪酸の比率は88.9%と高く, 臓器による差異が認められた。脳のCSEやCMHの構成糖は大部分がガラクトースであり, 動物種を超越した脳の機能に対するガラクトースの優位性が確認された。非神経系組織である肝臓のCMHには, 26.2%のグルコースが含まれていた。長鎖塩基はスフィンゴシンが主成分 (70.2%~84.4%) で, 動物種や臓器による差異は認められなかった。

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