日本油化学会誌
Online ISSN : 1884-1996
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48 巻, 7 号
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  • ポリウレタン分解酵素の性質
    中島 (神戸) 敏明
    1999 年 48 巻 7 号 p. 663-669,724
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    リパーゼをはじめとするエステル結合分解酵素 (エステラーゼ) は, 油脂の改質や医薬品合成等に幅広く用いられている。近年, 固体合成高分子の一種であるポリウレタンを特異的に分解するエステラーゼが, 細菌より発見された。本酵素は, 固体分子を効率よく分解するための特殊な機構を有する, 新規なタイプのエステラーゼであった。本酵素は触媒中心の他に基質表面に吸着するための疎水性の高いドメインを持っており, これがポリウレタン分解に必須であると考えられた。本酵素遺伝子はシビレエイ由来のアセチルコリンエステラーゼと高い相同性を持っていたが, アセチルコリンエステラーゼには存在しない疎水性領域が3箇所存在し, これが基質付着部位と考えられた。この特徴を利用したエステラーゼの新たな用途が期待される。
  • 杉田 陸海, 山家 永子, 濱名 秀樹, 佐々木 浩一, John T. DULANEY
    1999 年 48 巻 7 号 p. 671-679,724
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    海水棲環動物のエラコ (Pseudopotamilla occelata) から, イオン交換セファデックス, ケイ酸マグネシウムおよびケイ酸カラムクロマトグラフィーによって5種類の中性糖脂質 (CMS1, CMS2, CDS1, CDS2およびCTS) を単離, 精製した。それらの構造を糖組成分析, メチル化分析, 酵素的加水分解, GC分析, GC-MS分析およびMALDI-TOF MS (マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析装置) 分析によって解析し, CMS1 : Glcβ1-1CerとGalβ1-1Cerの混合物 (1.00 : 0.16); CMS2 : Glcβ1-1Cer; CDS1 : Galα1-4Galβ1-1Cer; CDS2 : Ga1β1-4Glcβ1-1Cer; CTS : GlcNAcβ1-3Ga1β1-4Glcβ1-1Cerであると決定した。これらの糖脂質のセラミド組成は, スフィンゴイド塩基が5種類ともジヒドロキシスフィンゴイド (d18 : 1) を, 脂肪酸はCMS1およびCDS1が飽和酸 (16 : 0, 17 : 0, 18 : 0) を, CDS2およびCTSが不飽和酸 (20 : 1, 22 : 1) を, CMS2がヒドロキシ酸 (h16 : 0, h17 : 0, h18 : 0) を主成分としていた。
    さらに, TLC上での挙動および構成成分の分析から, フコース, キシロースおよび2-ο-メチルガラクトースをCTS-糖鎖に加えたペンタおよびヘキサグリコシルセラミドの存在することが示唆された。しかし, この分析過程でテトラグリコシルセラミドに相当するものは検出できなかった。
  • 松村 秀一, 牧 昌孝, 戸嶋 一敦, 河田 和雄
    1999 年 48 巻 7 号 p. 681-692,725
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    ジ-及びトリグリセリン脂肪酸エステルの酵素合成, 界面活性, 洗浄力, 抗菌性及び生分解性について研究を行った。これらは相当するポリグリセリンと脂肪酸メチルエステルをリパーゼを用い, 50~85℃, 減圧下エステル交換反応により合成した。リパーゼによるアシル化反応は酵素起源, 圧力及び遊離の脂肪酸, メチルエステル, 酸無水物やビニルエステルなどのアシル供与体に依存した。ジグリセリンドデカン酸モノエステルは従来のポリオキシエチレンアルキルエーテルやアルキルβ-グルコシドなどの非イオン性界面活性剤と比較して非常に安定な泡を生成した。ジ-及びトリグリセリンドデカン酸モノエステルは従来のエーテル型非イオン界面活性剤と同等の洗浄力を示した。さらに, ジグリセリンドデカン酸モノエステルはドデシルβ-グルコシドと類似の抗菌性を示した。試験を行ったすべてのポリグリセリン脂肪酸エステルは活性汚泥により容易に生分解された。
  • 田中 伸子, 岡村 浩
    1999 年 48 巻 7 号 p. 693-697,725
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    スフィンゴ糖脂質の生体機能を解明するため, 動物種間の差異を比較することは有効な手法である。そこで脊椎動物詰の中で進化の度合が低い魚類の中からマイワシを取り上げ, 脳に高濃度に含まれていたセラミドモノヘキソシド (CMH) に注目しその分子構成をGLC分析により明らかにするとともに, 脳のスルファチド (CSE) や肝臓のCMHとの比較検討も行った。
    マイワシ脳のCMHは哺乳類に比べ含有量が低く, 種特異性が認められた。脳のCSEやCMHの主要脂肪酸の炭素数は24であり, 構成脂肪酸の不飽和度は哺乳類よりも高かった (72.4%と67.5%) 。脳と逆に, 肝臓のCMHの脂肪酸は不飽和度は低かったが, ヒドロキシ脂肪酸の比率は88.9%と高く, 臓器による差異が認められた。脳のCSEやCMHの構成糖は大部分がガラクトースであり, 動物種を超越した脳の機能に対するガラクトースの優位性が確認された。非神経系組織である肝臓のCMHには, 26.2%のグルコースが含まれていた。長鎖塩基はスフィンゴシンが主成分 (70.2%~84.4%) で, 動物種や臓器による差異は認められなかった。
  • 深田 和宏, 伊藤 優子
    1999 年 48 巻 7 号 p. 699-705,726
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    extrusion法によって, 卵黄レシチン (egg PC) もしくはegg PCとdimyristoylphosphatidylglycerolとの混合物 (モル比=67 : 1あるいは27 : 1) からベシクル分散液を調製し, 種々のpH, 塩濃度の分散媒中でのベシクル粒子のゼータ電位を電気泳動光散乱装置によって測定した。その結果, 中性pHでは全ての試料は負のゼータ電位値を示すが, pHを減少させていくと電位は上昇し, pHが約3以下になると正の値をとることが確認された。これは, egg PC分子中のリン酸エステル部分のプロトネーションによると思われる。さらに, 調製したベシクルの凝集挙動や分散安定性を濁度測定, 目視観察によって調べ, DLVO理論に基づいて解釈した。凝集挙動については, 実験で得られた結果はある程度DLVO理論によって定量的に説明できたが, egg PCベシクルの分散安定性に及ぼすpH及び塩濃度の効果に関しては, DLVO理論では上手く説明できない挙動が観察された。
  • 近藤 行成, 浜崎 正範, 飛田 和彦, 酒井 秀樹, 阿部 正彦, 好野 則夫
    1999 年 48 巻 7 号 p. 707-711,726
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    一分子内にフッ化炭素鎖と炭化水素鎖を有するアニオン性ハイブリッド界面活性剤 [C6F13C6H4COCH (SO3Na) C4H9, (F6H4)] の10wt%溶液は, その他の濃度 (1, 20, 30wt%) の溶液と比べて, 30~40℃の温度範囲で極めて高い粘性を示す。本研究では, この高粘性がフッ化炭素鎖の影響によるものであるか否かを検討するために, ハイブリッド界面活性剤のフッ化炭素鎖を炭化水素鎖に置換した構造をもつ新規炭化水素系界面活性剤 [CmH2m+1C6H4COCH (SO3Na) CnH2n+1, (HmHn)] を合成した。中間体ケトンの1- (4-アルキルフェニル) -1-アルカノンは塩化アルミニウム存在下, アルキルベンゼンと酸塩化物との反応により得られた。目的の界面活性剤HmHnはケトンを三酸化硫黄 : 1, 4-ジオキサン錯体と反応させたのち, 水酸化ナトリウム水溶液で中和することにより得られた。フッ化炭素鎖を持たないHmHn水溶液の表面張力ならびにcmcはハイブリッド界面活性剤のそれよりも高かった。また, HmHnの高濃度水溶液からはF6H4の場合に見られる特異的な粘度変化は見られなかった。
  • 金子 大介, 服部 達也, 坂本 一民
    1999 年 48 巻 7 号 p. 713-718,727
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    N-ラウロイルグルタミン酸塩の中和の度合いによる性質の変化を調べた。起泡力は中和度が1.6で極大を示し, 乳化力は中和度に伴い減少した。13C-NMRの結果より, α位のカルボン酸から優先的に中和され, 引き続きγ位のカルボン酸が中和度1.6以降で中和されることがわかった。さらに蛍光プローブ法から, 中和度1.6付近でミセルの微視的極性および会合数が急激に増加することがわかった。これらの結果から, α位のカルボン酸が分子間の相互作用に寄与していることが示唆された。
  • 遠藤 泰志, 林 順子, 藤本 健四郎, 柴田 晴雄, 小野 利也, 毛利 哲
    1999 年 48 巻 7 号 p. 719-722,727
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    廃棄物であるイチョウ果皮を医薬品として有効利用するため, イチョウ果皮に含まれるフラボノイドとテルペノイドの定性・定量分析を行った。イチョウの葉に存在するケンフェロールやケルセチン, イソラムネチンのようなフラボノールは果皮では検出されなかったが, デルフィニジンやシアニジンのアントシアニジンが存在していた。また果皮には, 葉と同様にテルペノイドとしてギンコライドを少量含んでいた。果皮のアントシアニジン量は収穫時期に依存しなかったが, ギンコライドの組成は成熟中に変化した。
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