日本油化学会誌
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高酸性度および中酸性度食酢生産性の酢酸菌に含まれるリン脂質クラスの比較分析
後藤 英嗣益子 まゆみ大西 正男塚本 義則
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2000 年 49 巻 4 号 p. 349-355,390

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抄録
定常期まで培養した高酸性度食酢生産菌 (高酸度菌, Acetobacter polyoxogenes, 酢酸濃度20%までの食酢生産菌) と中酸性度食酢生産菌 (中酸度菌, Acetobacter sp., 12%までの食酢生産菌) に含まれるリン脂質の化学的組成を比較分析した。主要なリン脂質として, ホスファチジルコリン (PC), ホスファチジルエタノールアミン (PE), ホスファチジルグリセロール (PG) およびカルジオリピン (CL) の存在が認められたが, CLは高酸度菌では検出されなかった。両菌におけるPGの割合には大差 (33%と35%) がなかったが, 高酸度菌では中酸度菌と比べてPC量 (高酸度菌では56%, 中酸度菌では37%) が顕著に高く, 逆にPE量 (高酸度菌では11%, 中酸度菌では22%) が低かった。既住の報告と考え合わせると, このような酢酸菌での膜中のPC量の高値は培地中の高濃度の酢酸に対する耐性機構と関連するものと推測される。一方, リン脂質クラスの構成脂肪酸の組成には両菌の間で顕著な違いは認められず, いずれの脂質クラスでもシス-バクセン酸が大部分を占めていた。しかし, 中性リン脂質クラスを構成する不飽和脂肪酸の総量は, 酸性リン脂質クラスのそれよりも少し高かった。
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