日本油化学会誌
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コール酸誘導体の分子集合とその包接空間の利用
宮田 幹二佐田 和己
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2000 年 49 巻 5 号 p. 447-454,512

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抄録
コール酸誘導体は様々な有機物と結晶性包接化合物をつくる。二百以上の結晶構造データに基づいて, その包接化合物における分子認識が調べられた。ホスト分子は分子間水素結合により会合して, 層状あるいはらせん状の多様な集合体を形成することがわかった。これらの分子集合様式は, キラリティ・方向性・両親媒性などにおける, ホスト分子の独特な面状構造に基づいて解釈することができる。特に, ホスト分子の水素結合基は集合体形成に重要な役割を果たしている。分子構造のわずかな変化により, 水素結合網が変化して, 集合体が劇的に変化することがある。水素結合様式は複数あるため, ゲスト依存性の多形結晶が得られる。アルコールゲストに対する包接能は, ホストにより非常に異なっていた。このような包接能の違いは, ゲストを捕らえる水素結合基がホストの分子集合体に存在するかどうかにより決まる。包接空間は, ラセミ体の分割や重合反応の場として利用できる。このような研究から, コール酸誘導体とタンパク質との間に類似関係のあることが明らかになった。そのため, 定序性キラル炭素鎖が潜在的に持つ分子情報は, 分子集合のプロセスを通じて, その形質や機能の発現へと具現化されるものと考えられる。
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