抄録
人口予測において各自治体が用いている「コーホート要因法」は現在の人口変化の構造をなぞる方法で,いわば「既定路線としての運命」を示すものである.プランニングにおいては,この運命をより良い方向に変えていくための政策や努力が求められる.どんな政策や努力が有効かを知るには,単に実際の人口増減を見るだけでは不十分で,この運命をどれだけ変えたかを見ることが必要である.本研究ではコーホート要因法による推計人口と実人口の差をこの運命変革分として抽出し,それがどのような理由で生じたのかを統計的に解析することでこの課題に答えた.全国の市町村を対象とした分析の結果,社会基盤整備や大規模災害の影響が有意に効いていることが示された.また早くから地域おこしの取り組みをおこなった自治体で正の効果が出ていることも示された.