抄録
現在のランカスター英語方言の母音特徴を分析し,他のイングランド北部英語や一般イギリス英語 (GB) と比較して考察する。単一母音ではCLOTH母音とPALM母音に特徴があり,GB同様にGOOSE母音の前舌化,及びTHOUGHT母音とNORTH母音とFORCE母音の融合と狭母音化が進行していることを示す。また,FOOT母音とSTRUT母音が同じ音素であるとは言えないことを音響的な音声分析のデータから証明する。さらにNURSE母音では綴り字が <ur> の単語と <ir> の単語では発音に差異が見られることも実証的に示す。同様に二重母音についてもイングランド北部英語の伝統的な特徴の保持と新しい変化について論じる。