日本公衆衛生雑誌
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原著
喫煙がん患者における入退院に関連した喫煙行動の変化と退院後の喫煙行動に関連する要因
蓮尾 聖子田中 英夫木下 洋子木下 典子大島 明
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2002 年 49 巻 10 号 p. 1053-1061

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抄録
目的 喫煙者が,がんの診断,および入退院を契機にどのように喫煙行動を変化させたかを把握する。また,社会復帰後の喫煙行動とこれに関連する要因を調べ,退院後の再喫煙防止に向けた効果的な指導の時期や方法を考えるための情報を得る。
方法 調査対象は1995年~96年に大阪府立成人病センターで新たに胃がん,または口腔・咽頭・喉頭がんと診断され,入院治療を受けた患者のうち,初診時点で喫煙していた者で,かつ対象者を選択する1998年 7 月時点で生存しており,喉頭全摘術を受けていなかった者とした。同年 8 月に記名自記式の調査票を郵送し,入院前日,入院当日,退院前日,退院 2 日目,および退院から18か月以上経過した時点(以下,社会復帰後とする)での喫煙行動を把握した(回収率72.6%:138/190)。院内がん登録より得た臨床進行度や入院期間等の情報を調整し,退院するまでの喫煙行動パターンと社会復帰後の喫煙行動との関連を多重ロジスティック回帰分析で検討した。
結果 女性 3 人,入院期間が 2 日であった 1 人を除く134人の入院前日,入院当日,退院前日,退院 2 日目,および社会復帰後の各時点における断面禁煙率は,10.4%,32.6%,71.9%,40.0%,51.0%であった。入院当日は入院前日に比べて,また退院前日は入院当日に比べて断面禁煙率が有意に上昇していた(各々 P<0.001)。入院前日にタバコを吸わなかった者における社会復帰後の断面禁煙率は92.9%,入院前日にタバコを吸っていたが入院当日にはタバコを吸わなかった者におけるそれは80.0%であった。また,入院前日・当日,退院前日の何れの時点でもタバコを吸っていた者におけるそれは13.0%であった。多重ロジスティック回帰分析の結果,がんの部位(頭頸部/胃),入院前日にタバコを吸わなかったこと,入院前日はタバコを吸っても入院当日にタバコを吸わなかったこと,は有意な社会復帰後の禁煙成功要因であった。高齢者(61歳以上),入院期間の長い者(32日以上),および医療従事者による明確な禁煙の指示を受けた者では,社会復帰後の禁煙確率が高くなる傾向があったが,統計学的有意性を認めなかった。
結論 がん患者の喫煙行動は,入退院を契機に大きく変化していた。退院するまでの喫煙行動の変化と社会復帰後の喫煙行動との間には,強い関連が認められた。
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© 2002 日本公衆衛生学会
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