日本公衆衛生雑誌
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アメリカ合衆国における人工妊娠中絶と10代の望まない妊娠対策 わが国における人工妊娠中絶と10代の望まない妊娠対策と対比して
劔 陽子山本 美江子大河内 二郎松田 晋哉
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2002 年 49 巻 10 号 p. 1117-1127

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抄録

目的 アメリカにおける人工妊娠中絶に関する法律とその実際,10代の望まない妊娠対策などを調査することにより,わが国における10代の望まない妊娠対策の方向性を探る。
方法 アメリカにおける中絶,家族計画などについて書かれた出版物,政府機関や主要 NGO 等が発行している文献・統計資料,ホームページから情報収集を行った。さらに,関係諸機関を訪問して現地調査を行った。
成績 アメリカでは人工妊娠中絶の是非について,今だ中絶権擁護派と中絶反対派の間で議論が交わされており,社会的,政治的にも大きな問題となっている。こういった背景を受けて,中絶前後のカウンセリングや家族計画に関するカウンセリング,性教育などに重きがおかれていた。
 10代の望まない妊娠対策の一環として,特に若者だけを集めるクリニックや,ヤングメンズクリニックなどの施設が設けられ,若者が性に関する情報や,安価もしくは無料の避妊具・避妊薬を入手しやすい状況にあった。
結論 アメリカにおいては,中絶権擁護派と中絶反対派では人工妊娠中絶に対する考え方が異なっており,10代の望まない妊娠対策に対しても統一された方法はなく,さまざまな方法論がとられている。しかしアメリカにおける10代の妊娠率,人工妊娠中絶率は低下傾向にある。10代の性行動の活発化や人工妊娠中絶率の増加が危惧されるわが国において,今後10代の望まない対策を打ち立てていくとき,こういったアメリカで既に取り組まれている対策に学ぶべき点は多いと思われる。

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© 2002 日本公衆衛生学会
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