2009 年 56 巻 10 号 p. 713-723
目的 本研究では,地域高齢者のプロダクティブな活動と well-being の関連について横断調査結果から明らかにすることを目的とした。
方法 大阪市に居住する高齢者1,500人を対象にした郵送調査を実施し,576人を分析対象にした。プロダクティブな活動は,有償労働,家庭内無償労働,家庭外無償労働の 3 領域と,プロダクティブな役割の数により測定した。Well-being は,生活満足度(LSIK)と主観的健康感の 2 指標を用いた。分析は,well-being の各指標を従属変数,プロダクティブな活動それぞれを独立変数,基本的な属性や社会関係をコントロール変数として多変量解析を用いて男女別に行った。
結果 有償労働は,女性の生活満足度,男性と女性の主観的健康感と正の関連がみられた。家庭内無償労働は,男女ともに well-being の指標との関連がみられなかった。家庭外無償労働は,女性の生活満足度および主観的健康感と正の関連がみられた。プロダクティブな役割の数は,男性の主観的健康感,女性の生活満足度および主観的健康感と正の関連を示していた。
結論 女性では,家庭内無償労働を除くプロダクティブな活動が概して well-being を高める可能性が示唆された。男性では,有償労働への従事や,プロダクティブな役割を多く持つことが主観的健康感を高める可能性が示唆された。特に女性の高齢者に対し,家庭外でのプロダクティブな活動に関与しやすいような環境整備を進めることにより,本人の well-being の向上とともに,地域社会に活動による利益がもたらされる可能性が考えられる。