日本公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2187-8986
Print ISSN : 0546-1766
ISSN-L : 0546-1766
原著
1年間の要介護認定発生に対する基本チェックリストの予測妥当性の検証 大崎コホート2006研究
遠又 靖丈寳澤 篤大森(松田) 芳永井 雅人菅原 由美新田 明美栗山 進一辻 一郎
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 58 巻 1 号 p. 3-13

詳細
抄録

目的 介護保険制度の二次予防事業の対象者把握には,25項目の基本チェックリストを用いている。しかし,基本チェックリストによる要介護認定の発生予測能を実地に検証した報告は少ない。本研究の目的は,基本チェックリストの各項目や各基準について,要介護認定の新規発生に対する関連の程度とスクリーニングの精度を検証することである。
方法 2006年12月に宮城県大崎市の65歳以上の全市民を対象に,基本チェックリストを含む自記式質問紙を配布した。有効回答者のうち要介護認定の情報提供に同意し,基本チェックリストの回答項目数が 2 項目以上で,ベースライン時に要介護認定を受けていない者を 1 年間追跡し,死亡•転出した者を除外した14,636人を解析対象とした。解析には性•年齢の影響を補正するために多重ロジスティック回帰分析を用い,基本チェックリストの各項目と二次予防事業の対象者の選定に用いられる各分野の該当基準に該当した場合のそれぞれで,1 年間の新規要介護認定発生のオッズ比と95%信頼区間(95%CI)を推定した。また各分野に関して,感度と特異度を算出し,Receiver operating characteristic (ROC)分析を行った。
結果 二次予防事業の対象者の選定基準に該当する者は5,560人(38.0%),1 年間の要介護認定発生者は483人(3.3%)であった。基本チェックリストの全項目が,要介護認定発生と有意に関連した(オッズ比の範囲:1.45~4.67)。全ての分野の該当基準も,要介護認定発生と有意に関連した(オッズ比の範囲:1.93~6.54)。そして「二次予防事業の対象者」の基準のオッズ比(95%CI)は3.80 (3.02–4.78)であった。各分野のうち,ROC 曲線下面積が最も高かったのは「うつ予防•支援の 5 項目を除く20項目」であり,7 項目以上を該当基準にすると,「二次予防事業の対象者」の基準を用いた場合に比べ,感度は変わらないが(7 項目以上を該当基準にした場合77.0%,「二次予防事業の対象者」の基準を用いた場合78.1%),特異度は高かった(それぞれ75.6%,63.4%)。
結論 基本チェックリストの各項目や各基準は,その後 1 年間の要介護認定の新規発生の予測に有用であった。しかし,項目や分野によって関連の強さや予測精度は異なり,基準値には改善の余地があった。

著者関連情報
© 2011 日本公衆衛生学会
次の記事
feedback
Top