抄録
1. 産卵鶏の卵白蛋白質合成のためのアミノ酸供給源として,各組織がどのように寄与しているかを明らかにするため,17.5μCiのL-リジンーU-14Cを予想排卵時に静注して組織蛋白質,卵,排泄物,呼気中への14Cの移行を経時的に調べた。試験には60-70週齢で産卵率が100%の単冠白色レグホン種を用いた。リジンを0.71%含有する飼料を自由摂取させた。アイソトープ注射後,鶏を代射箱に入れ,呼気中の14CO2を5時間または10時間捕集した。注射5時間後,1日および2日後の予想排卵5時間後(以下29,53時間後とする)に供試鶏を各々3羽放血屠殺した。
2. 呼気CO2からの14Cの回収率は10時間で8.7%,排泄物からの回収率は5,29,53時間後に2.39,2.49,2.88%であった。
3. 肝臓からの14Cの回収率は5,29,53時間後7.15,5.85,4.35%であった。十二指腸,膵臓,空回腸では注射5時間後に肝臓よりも高い比放射能が観察されたが,組織量の大きさから,肝臓同様に卵白蛋白質の合成のためのアミノ酸プールになっているようには見られなかった。
4. 血漿からの14Cの回収率は5時間後は14.30%と高かったが,29,53時間後には5.50,4.26%に減少した。血漿の非蛋白質画分からの回収率は5時間後にはすでに0.14%と低かった。
5. 卵黄および卵胞への14Cのとりこみは5,29,53時間後に3.36,11.89,14.38%であった。5時間後には卵黄•卵胞8個に14Cのとりこみが認められた。各時間後とも2-5番目の卵胞への14Cのとりこみ量は同程度であった。
6. 第1卵白への14Cのとりこみは5.08-7.13%,第2卵白では8.98-9.88%,第3卵白では2.04%であった。卵管膨大部からの14Cの回収率は5,29,53時間後に14.59,5.34,4.35%であった。卵白と卵管膨大部からの14C回収中の和は19.41-23.40%であった。これらのことから,血漿中の放射能が高いうちに合成された卵白蛋白質の総てが第1卵白に分泌されるのではなく,その一部分しか分泌されないことが示唆された。