抄録
6種類の麦類およびフスマのリジン有効率を生物的測定法(真の代謝エネルギー測定法を応用した方法)と化学的測定法(フルオロジニトロベンゼンを用いる方法)により測定するとともに,リジン以外のアミノ酸についてもその有効率を明らかにした.
生物的測定法により求めたリジンの有効率は麦の種類により68~87%の幅が認められ,HP82とミドリムギが高い値を示した.また,裸麦類のリジン有効率は粗蛋白質含量と正の相関が認められた.
化学的測定法により求めたリジンの有効率は96~98%の範囲で,飼料間にほとんど差がなく,生物的測定法により求めた値と異った.
両者の関係を明らかにするため,強制給餌後の飼料に由来する排泄物のリジンのDNP化によりその化学形態を検討した.非有効性リジンは消化により排泄物中に濃縮されるが一部は吸収されること,また排泄物中のリジンの大部分は化学的測定法では有効性リジンとみなされるものであることが示された.これらの結果から麦類のリジンの有効率の測定には化学的測定法は適当ではないことが示唆された.
また,アミノ酸の有効率にいくつかの特徴がみられ,麦類ではGlu, Pro, His, Argの有効率が相対的に高く,Thr, Ala, Asp, Lysが低いことが示された.さらに,四国農試で作出された裸麦はアミノ酸含量,その有効率ともに優れていた.