抄録
本研究では,DNAフィンガープリントを遺伝指標として,家鶏と野鶏との遺伝的類似性について分析を行い,それにもとづいて種や品種相互間の遺伝的距離を推定した。供試鶏には,家鶏として日本在来鶏2品種(岐阜地鶏および薩摩鶏),中国在来鶏3品種(茶花鶏,武定鶏および西双版納闘鶏)および白色レグホーン種を用い,野鶏としては赤色野鶏,灰色野鶏,セイロン野鶏および緑襟野鶏の4種を用いた。DNAは赤血球より抽出し,各集団ごとに個体のDNAを等量ずつ混合した後,制限酵素Hinf Iで切断した。DNAフィンガープリント法のプローブには(TG) nを用いた。DNAフィンガープリントの遺伝的類似性の評価には,BS値を算出した。また,遺伝的距離の推定には,BS値より算出したサイトあたりの塩基置換数を用い,さらにこの結果から非加重結合法によってデンドログラムを作成した。
本研究に供試した家鶏と野鶏についてその関連性を調べると,まず家鶏では,日本在来鶏および中国在来鶏それぞれにおいて近い関係を示し,白色レグホーン種は中国在来鶏に比べて日本在来鶏との関係が比較的近いことが明らかとなった。一方,野鶏においては灰色野鶏とセイロン野鶏が近い関係にあり,これらはまた赤色野鶏とも比較的近いが,緑襟野鶏とは類縁関係が遠いことが判明した。さらに4種野鶏および家鶏間では,赤色野鶏が家鶏に最も近く,緑襟野鶏は家鶏とはかなり遠いことが示唆された。