日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
孵卵中外因性エストロジェンによって卵精巣化した雄鶏性腺の孵化後における変化
桝田 信也小柳 深
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2001 年 38 巻 5 号 p. J28-J35

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抄録

孵卵中に大量のエストロジェンの作用を受けた雄鶏の性腺は,孵化時には卵巣様を呈することが知られている.本研究は,これらの性腺の成長に伴う変化を明らかにするため,艀卵5日目の種卵に0.64mgのエストラジオールベンゾエイト(EB)を投与し,艀化後から402日齢まで雄鶏の成長に伴う性腺および血中テストステロン濃度の変化ならびに成熟後の射出精液性状,副生殖器の形態を検討した.
EB投与鶏の体重には対照鶏との間に差は認められなかったが,性腺重量は脾化時から60日齢までは対照鶏よりも低く,性腺の組織観察による精子形成状態においても104日齢では成熟相にある精子細胞数は対照鶏に比べて極めて少なかった.しかし,402日齢では性腺重量および精子形成状態は対照鶏とほぼ同様になった.血中テストステロン濃度は104~139日齢まで対照鶏よりも低かったが154日齢以降では差はみられなかった.しかし,402日齢のEB投与鶏の精巣表面には凹凸および胞状構造が認められた.さらに,300口齢以降に腰部マッサージ法で精液採取を試みた結果,クロアカの反転はまったく認められず,射出精子数は対照鶏の27.2%であった.また,精管の幅は対照鶏の57.7%と細く,種々の大きさの左右卵管が認められた.
これらの結果から,艀卵中に外因性エストロジェンによって卵精巣となった雄性腺は加齢に伴って本来の性腺に戻り,精巣として正常なアンドロジェン分泌能および造精能をもっものと考えられる.しかし,騨卵初期の外因性エストロジェンの影響は精巣の表面形態の変化として残り,副生殖器の分化は著しく阻害され十分な量のアンドロジェンが分泌されても正常には発達せず,その影響は成熟後まで残るものと推察される.

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