抄録
昭和41年8月頃より関西地方で餌付後5~7日令頃のヒナに Blindness (Bl) が発生した。本研究はこの発生原因を主として飼料学的見地から究明したものである。
(1) Blが発生した現地で給与していた飼料を用い, 実験的に再現を行なったところ, その飼料によりBlの発生を認め, Bl発生の原因が主として給与された飼料によるものと考えられた。
(2) Blの発生した飼料に配合された魚粉を用いてヒナを飼育したところ, Blの発生を認めた。また, このBl発生魚粉中には粒子の細かい高窒素化合物の混入されていることを認めた。
(3) 魚粉メーカーでBl発生魚粉に混入したと考えられるM物質を入手したので, これをチックフードに添加してヒナに給与したところ, M1.5~10添加区にBlの発生が認められた。またBl発生率はMの添加量が増加するにつれて高くなり, 10%添加でBl発生率100%となった。この0.5%添加ではBl発生はなかった。
(4) M物質を比重分離し, 比重1.60で浮遊するA, 比重1.60で沈澱し, 比重2.00で浮遊するC, 比重2.00で沈澱するEの3者を, ヒナに給与したところ, CのみにBlが発生した。
なおCの物理化学的な性質がシアナミド誘導化合物に類似することが推定されたので, 赤外線吸収スペクトル法およびペーパークロマトグラフィ法により確かめたところ, Cの中にはアンメリンが主成分として含まれているものと考えられた。
(5) アンメリンならびに各種のシアナミド誘導体をヒナに給与したところ, アンメリン添加区のみにBlの発生が認められた。またその症状は現地でのBl発生, またはM, C物質投与によるBl発生と全く同様のものであった。
(6) 以上のことから, 関西地方に発生したヒナのBlはアンメリンを含む魚粉を配合されたチックフードを与えたのが, その原因であると考えられた。