日本繁殖生物学会 講演要旨集
第98回日本繁殖生物学会大会
セッションID: 52
会議情報
黄体
ヒト黄体における血管新生と血管成熟
*松岡 亜希浅田 裕美三輪 一知郎竹谷 俊明山縣 芳明滝口 修司田村 博史杉野 法広
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】黄体の発育や機能維持には、血管新生や血管成熟が重要である。血管新生には、VEGFによる血管内皮細胞の増殖のほかに血管支持細胞の脱安定化が必要であり、血管成熟には血管内皮細胞と血管支持細胞(ペリサイト)の相互作用による血管の安定化が必要とされている。血管の安定化にはAngiopoietin-1(Ang-1)がAng-2に比べて優位になり、脱安定化にはAng-2が優位になる必要がある。今回は、ヒト黄体におけるAngiopoietin発現を検討した。【方法】黄体内血管数およびペリサイトの変化をCD34、SMAによる免疫組織染色にて検討した。Ang-1とAng-2の月経周期と妊娠による変化を免疫組織染色およびRT-PCR法にて検討した。組織採取には患者の同意を得た。【成績】(1)黄体内血管数は初期では既に中期と同じレベルに達しており,後期には減少した。妊娠黄体では中期に比し若干であるが有意に増加した。(2)Ang-1は黄体期中期と妊娠黄体で強い発現を示したが、後期や退縮期では弱い発現であった。Ang-2は黄体期中期と妊娠黄体で強い発現を示したほか、後期の黄体でも強い発現を呈したが、退縮期では弱い発現であった。(3)Ang-1mRNAは他の周期に比し妊娠黄体で高値を示し,Ang-2mRNAは退縮期で高い発現であった。(4)ペリサイト陽性血管は,黄体期初期では少なく、黄体期中期および妊娠黄体で増加した。【結論】黄体期初期は、血管新生が亢進しているが血管は脆弱であり、中期は血管新生よりはむしろ血管の安定化が起こっており、退縮に向かう黄体では血管の退縮が進み,また,妊娠黄体では血管新生と血管成熟が同時に起きていることが考えられた。このような血管新生と血管の安定化の変化は、黄体の発育や機能維持に重要であると考えられる。
著者関連情報
© 2005 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top