2009 年 49 巻 3 号 p. 67-89
水産業・漁村の多面的機能のうち環境・生態系保全機能に注目し,沿岸生態系保全と本来的機能である水産資源管理が不可分であることを考察する。八重山地域では,離島漁業再生支援交付金により資源管理,パヤオ設置,サメ駆除,ハーリー体験など多くの取組が実施されており,この制度が有効に利用されている。石西礁湖をはじめとする八重山のサンゴ礁は,大規模白化現象,赤土汚染,過剰栄養塩,オニヒトデなど,様々な脅威にさらされている。特に,2007年の高水温による白化の被害は大きく,2008年からはオニヒトデが大発生している。最近,サンゴの移植活動が活発になっているが,移植には理念的・技術的な多くの課題がある。2006年には石西礁湖自然再生協議会が組織され,サンゴ礁保全の様々な活動が実施されている。だが,水産資源管理との連携は十分ではない。八重山のサンゴ礁魚類の漁獲量は,近年,急激な減少傾向にある。主因は漁獲過剰だろうが,サンゴ礁の荒廃も関係している可能性が高い。八重山漁協は禁漁区と体長制限を柱とした資源管理に取り組んでいる。この資源管理は,遊漁者,ダイビング業者,離島の住民などとの連携もめざしており,一部成果もみられるものの,課題も多く残っている。沿岸域においては,「里海」の概念にあるように,水産資源を持続的に利用しながら,同時に生態系も保全していく方向が重要である。