抄録
SiCデバイスはSiデバイスに比べ,電力の低損失化や電力変換装置の小型化,電力変換の高効率化,冷却の簡易化など様々なメリットが挙げられ,今後,広い分野での応用が期待されている.しかし,SiCはダイヤモンド,立方晶窒化ホウ素に次ぐ高硬度材料であり,インゴットからウェーハに加工する際に大きなコストが掛かる.そのため,SiCの切断には一度に多くのウェーハを切り出せるマルチワイヤソーを用いる切断が主流となっている.マルチワイヤソーには固定砥粒方式,遊離砥粒方式が従来から用いられてきた.そこで,本研究では近年開発された遊離砥粒方式の発展型である低濃度のダイヤモンドスラリーに樹脂コーティングワイヤを用いる方式において,SiCのスライシング加工を行った.その結果,切断したSiCウェーハの表面のダメージ層を最大で58nmまで減少可能であることが明らかとなった.