日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
地域高齢者における認知症の実態─久山町研究
小原 知之神庭 重信清原 裕
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2012 年 23 巻 3 号 p. 211-216

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抄録

福岡県久山町では 1985年より精度の高い老年期認知症の疫学調査が進行中である。1985 ~2005 年に 65歳以上の高齢住民を対象に4回行った時代の異なる認知症の有病率調査の成績を比較すると,久山町では,時代とともにアルツハイマー病(AD)の有病率は有意に増え,減少傾向にあった脳血管性認知症(VaD)の有病率も近年増加に転じた。非認知症集団の追跡調査の成績から,65 ~89歳の認知症発症群と性・年齢を対応させて無作為に抽出した認知症非発症群の生存曲線を比較すると,認知症群の生存率は有意に悪かった。危険因子の検討では,老年期の高血圧はVaD発症の有意な危険因子であり,中年期に高血圧であった群は老年期の血圧レベルにかかわらずVaDの発症リスクが有意に高かった。一方,耐糖能異常/糖尿病はVaDとともにAD発症の有意な危険因子であり,特に負荷後2時間血糖値の上昇にともないVaDおよびADの発症リスクは有意に上昇した。

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© 2012 日本生物学的精神医学会
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