日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
ノルアドレナリンによる痛覚制御機構:グリア細胞を介する新しいメカニズム
津田  誠
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2021 年 32 巻 1 号 p. 2-5

詳細
抄録
青斑核のノルアドレナリン(NA)神経は,恐怖や不安,覚醒,ストレスなどへの関連性が示されている。加えて,同神経は末梢からの痛覚刺激で興奮する。青斑核NA神経は上行性だけでなく,脊髄後角へ下行性に軸索を投射し,同部位で放出されたNAが末梢からの痛覚伝達を抑制すると考えられている。脊髄後角には,脳と同様に神経だけでなく,グリア細胞が豊富に存在する。最近筆者らは,脊髄後角の表層に限局したアストロサイトサブセットを発見し,同サブセットが皮膚への痛覚刺激によって細胞内カルシウム上昇を誘発することを明らかにした。このカルシウム応答は青斑核の下行性NA神経を介しており,軽度機械刺激に対する痛覚過敏行動を誘発した。本稿では,脳から脊髄後角への下行性痛覚制御システムにおいて,上記アストロサイトサブセットを介する新しい調節機構を概説する。
著者関連情報
© 2021 日本生物学的精神医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top