土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
68 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
和文論文
  • 山内 正仁, 松元 皓隆, 山田 真義, 八木 史郎, 村山 陵, 山口 善敬, 山口 隆司
    2012 年68 巻2 号 p. 85-92
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,まずきのこ栽培用の焼酎粕・でん粉粕培地の臭気物質の同定と定量を行った.その結果,アセトイン,酪酸,ジアセチルが主成分となり,これらにその他の臭気物質が混ざり合うことで独特の不快な臭いを発していることが示唆された.また,これらの臭気物質は培地に菌糸が蔓延するにつれて消失した.つぎに液体培地を用いて,主成分の臭気物質の消臭メカニズムを検討した.その結果,これらの臭気物質は菌体外酵素の働きで消失している可能性は低く,きのこ菌糸そのもので分解されている可能性が高いことが示唆された.さらに,臭気指数およびにおいの質について調査し,焼酎粕・でん粉粕培地の臭いは,培養が進むにつれて培地本来の酸っぱい臭いから,きのこの匂いへ,においの質が変わると同時に,臭気指数は減少することが明らかになった.
  • 長谷 恵美子, 北野 大, 川辺 能成, 駒井 武
    2012 年68 巻2 号 p. 93-103
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/04/20
    ジャーナル フリー
     生態系の基盤としての土壌環境に係る影響評価,リスク評価が注目されている.本研究では,保全対象としての土壌生態系に対する化学物質が及ぼすリスクの評価手法を構築し,生態系の土壌機能保全および化学物質管理の一部として活用することを提案した.その事例としてダイオキシン類のリスク評価を取り上げ,土壌生態系の食物連鎖の底辺(下位)にある土壌無脊椎動物,土壌微生物それぞれに対して,有害性評価,曝露評価,リスクの判定を実施し,土壌微生物(分解者)と土壌無脊椎動物(一次消費者)に対して,許容可能なリスクレベルを維持するための土壌環境濃度を推定した.本研究で示した土壌生態系に対するリスク評価手法は,生態系の基盤としての土壌環境の影響評価と化学品管理のための自主的なリスク評価に有用な知見を与えると考えられる.
  • 堀 紘子, 橋本 禅, 藤田 壮, 土田 えりか, 濱野 裕之
    2012 年68 巻2 号 p. 104-113
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/18
    ジャーナル フリー
     都市熱環境改善技術の導入施策の効果を定量的に算定するシステムを,地域環境GISデータベース,技術インベントリ,施策オプション,都市熱環境シミュレーションモデルを組み合わせて構築することで,建物・土地利用を考慮した技術導入ケースを設定した上で,空調エネルギー消費に伴うCO2排出量の削減効果の算定を可能にした.具体的には川崎市の中心市街地を対象とするケーススタディを行い,緑化施策,保水性舗装,建物改善技術を同時に導入することで,外気負荷による空調エネルギー消費に由来するCO2排出の,約1%の削減効果を明らかにした.
  • 王 欣, 横山 孝男, 大岩 敏男
    2012 年68 巻2 号 p. 114-128
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/18
    ジャーナル フリー
     著者らは垂直2セルに分割した単一井戸で土壌・地下水汚染域の洗浄と回収を同時に行うランチャー型井戸の実用化に取り組んでいるが1), 2),2本の井戸による擬似ランチャー方式も提案してきた.本論文では擬似ランチャー方式の有効性を示すことを主眼とし,そのため必要な数値解析コードを用いて,擬似ランチャー浄化の基本となる井戸配置方針の明確化を目的とする.著者らは1次元カラム実験を行い,数値解析に必要なパラメータを同定すると共に,数値解の改善および妥当性を検討した.次いで,室内擬似ランチャー縮小モデル実験によって,汚染域に物理的な損傷を与えずに汚染物質を洗い出すことの有効性を確認し,原位置での浄化機能を高めるための基本的井戸設置形態を3次元数値解析で検討し,擬似ランチャー浄化法井戸配置の基本方針を明らかにした.
  • 隅倉 光博, 兒島 敏一, 岡村 和夫, 堀内 澄夫
    2012 年68 巻2 号 p. 129-137
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル フリー
     河川や湖沼等の底質は,有機物の蓄積により嫌気化が進み,水質の悪化や生態系への影響が問題となっている.その対策として好気処理の検討が行われている.しかし,底質の複合毒性や,好気処理過程の環境影響評価は充分とは言えない.
     我々はオオミジンコ(Daphnia magna)を利用したバイオアッセイにより,ベトナム河川底質の毒性,および室内好気処理実験による毒性変化と溶存イオンの関係について検討した結果,以下のような知見を得た.(1)硫化物,アンモニア,および塩素の毒性が影響するはずであるが,何らかの複合作用によりそれぞれの毒性はマスクされる現象が示唆された,(2)有機物が分解した中間生成物により再毒性化する現象が確認され,その一つの要因として亜硝酸イオンが示唆された.
  • 山村 尊房, 大貫 まろみ, 長岡 裕
    2012 年68 巻2 号 p. 138-151
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル フリー
     小学校における児童の水分補給方法として水筒持参が各地にみられ,学校での水道の役割が変化している.本研究は,水筒持参の潜在的な原因や問題の構造を探り,政策的な取り組みにつなげるため,小学生を持つ母親を対象として,様々な心理要因と水筒持参に至る思考過程から潜在変数と観測変数を想定したオンラインアンケートを実施した.調査の結果,飲料水の選択には地域的な差異があり,子供に水筒を持たせたいと考える親は西日本を中心に多く,東日本にも広がっていることがわかった.共分散構造分析によるデータ解析の結果,水筒持参は,学校水道への不満感によって生じ,それは学校への不満に強い影響を受け水道水質への信頼感の欠如に影響されていることが明らかになった.これらの知見を踏まえた取り組みを関係者が連携して行うことが必要である.
  • 中久保 豊彦, 東海 明宏, 大野 浩一
    2012 年68 巻2 号 p. 152-171
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,汚泥処理事業による厨芥の消化槽受入施策,剪定枝の汚泥乾燥熱利用施策を,脱水汚泥の増加が焼却・燃料化工程にもたらす影響や,ごみ焼却施設側の排熱発電の高効率化を踏まえて評価することを研究の目的とした.神戸市を対象自治体とし,現有設備の更新が終了する2030年におけるエネルギー消費量,温室効果ガス排出量,リン回収量,事業コストの評価を行った.更新ケース3-C(厨芥:消化槽受入,脱水汚泥:熱分解ガス化・発電,剪定枝:汚泥乾燥熱利用)は,標準的なケース1-A(厨芥:焼却・排熱発電,脱水汚泥:高温焼却)と比較して,年間でエネルギー供給量452TJの増加,温室効果ガス排出量38kt-CO2eq.の削減,リン回収量93t-Pの増加,事業コスト0.9億円の削減が達成できると推計された.
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