2012 年 68 巻 6 号 p. II_229-II_236
本研究では,電力負荷平準化による需要家の経済的便益という側面に着目して,電力負荷とPV出力の2つの変動を表すモデルを適用し,PV・BTシステムを設置・稼働した場合の費用効果を算定するモデルを構築した.産業工場の屋根にPVを設置し,BTからの放電をピークカットに用いた場合のパフォーマンスを表すモデルを用い,確率分布を推計し,分析評価を行った.現在のPV,BT価格を前提とした費用効果算定では,総支払額の削減には程遠いという結果となった.PVは現在価格の0.50倍になってもそれを導入することの費用効果がプラスに転じることはないが,BTの現在価格の0.8倍より下がると費用効果がプラスに転じる点が初めて現れた.PVとBTを組み合わせて導入する場合,価格低下が進むにつれて,需要家に費用効果がマイナスになることなく導入できるPVの容量が大きくなることがわかった.また,契約電力超過確率10%程度まで許容すれば,超過による罰則金を支払い,契約電力を削減した利得を多く得られなくとも,PV・BT容量を抑えて,導入費用を低減させる方が費用効果が大きくなることがわかった.