抄録
本研究では,2050年に世界GHG排出量を1990年比半減する目標の実現可能性と,その社会経済影響を定量的に分析した.分析には応用一般均衡モデルを使用し,対象地域はアジアの主要10地域(中国,インド,インドネシア,日本,韓国,フィリピン,マレーシア,台湾,タイ,ベトナム)とした.
結果から,国内削減のみを考慮した場合には日本と韓国を除いた8地域で排出量削減目標は技術的・経済的に達成可能である.日本・韓国においては国際的な排出量取引等の取り組みが目標達成に向けて必要不可欠である.また,目標達成に伴って経済的ロスが発生し,マレーシアを筆頭にタイ,インドネシア,ベトナム,中国にて10%以上のGDPロスが見られた.しかしながらこのロスを考慮してもGDPは現在と比較して増加し,経済発展は可能である.