抄録
環境質の非利用価値の計測は,事業の実行の判断に影響を与える重要な項目である.この非利用価値は表明選好データを用いて計測されることが多いものの,バイアスの問題から,計測された値には,非利用価値以外の価値,たとえば利用価値が含まれる可能性がある.本研究では,表明選好データと顕示選好データを用い,非利用価値の評価値から利用価値を分離する方法を検討した.推計には,北海道の湿原に対する訪問行動および生物の種類の増加に対する支払意志額のデータを用いた.結果として,表明選好データのみから計測された約339円/年の非利用価値の内,約146円分が利用価値,約193円分が非利用価値である可能性が示唆された.