2015 年 71 巻 6 号 p. II_163-II_169
イシガイ目二枚貝は,タナゴ亜科魚類に産卵母貝として利用されるなど他の生物と共生関係にあり,河川生態系の重要なキーストン種とされる.しかし河川環境の劣化に伴い,二枚貝類はその生息数を減少させており,生息場の再生技術の確立は,河川環境管理上重要な課題である.本研究では,二枚貝生息場再生技術の確立に資する知見を得ることを目的として,イシガイ目二枚貝の主な生息環境であるワンドの物理的特徴と二枚貝生息分布の関係について調査するとともに,洪水流により二枚貝が流失するという仮説の検証実験を行った.その結果,ワンドの地形的形状によって二枚貝の生息分布状況が異なっていること,一部のワンド(特に洪水時の攪乱を受けやすい形状のワンド)では二枚貝が洪水時に流失することが明らかとなった.