2015 年 71 巻 6 号 p. II_43-II_52
近年,エネルギーの安定供給の観点から,電力や熱として利活用可能な水素が注目されている.特に,水素を車の燃料として利用できるFCV(燃料電池自動車:Fuel Cell Vehicle)では,災害時には地域へ電力を供給することも可能であるという特性を有していることから,FCVへ水素を供給する水素ステーションの普及が求められている.本研究では,下水処理施設に水素ステーションを導入した場合を想定し,バイオガスから水素を製造した際のエネルギー供給可能量を推計し,事業性を試算した.その結果,対象とした下水処理施設で水素を供給した場合,年間約2,100台のFCVに水素を供給でき,災害時には地域の約1.11日分の電力需要を賄うことができることが示唆されたが,水素ステーションの普及が発展途上であるため,事業性の確保については難しいことが示された.