抄録
吉野川は,1950年代から1980年代にかけてアユ漁が盛んであり,アユの産卵は約50kmもの長い区間を持つことが報告されている.しかし,様々な自然的・人為的インパクトによって河川環境が変化し,アユの産卵場の消失が懸念されている.本研究では,アユの産卵場環境に影響を及ぼす河川環境要因について検討するため,吉野川の河口から14~20kmの区間を対象とし,漁業者へのヒアリングとアンケート,そして物理データの関係性について解析した.その結果,漁業者が指摘するアユ産卵場の減少や河川環境の変化といった情報は信頼性が高いことが示唆された.また,アユの産卵場に影響を及ぼす河川環境要因として年最大流量の減少,河床の固定化が影響していると考えられた.