抄録
地域再生の鍵として,ソーシャル・キャピタル(SC)が注目されている.しかしながら,地域のSCと個人のSCとを混同している事例も少なくない.そこで本稿では,地域のSCと個人のSCの測定方法の違いを整理した上で,Resource generatorを用いて地域住民のSCの測定を行い,住民の地域評価や主観的な幸福度などとの関連について共分散構造分析を用いて分析した.測定の結果,情報提供や共有,特殊技能を必要としない物理的なサポートについては高い獲得率が示される一方で,特殊技術を必要とする物理的サポートや専門的な知識・技術へのアクセスについては獲得率が低かった.また,性別や年齢による獲得率の差が見られた.さらに,共分散構造分析により,リソースの獲得数の背景にあるSCは,個人の主観的な幸福度を高めるほか,地域への愛着を高め,それが定住意思や地域への高評価につながっていることが示された.