抄録
本論文では,Cr(VI)に起因した土壌・地下水汚染の長期挙動予測を目的として,地下水中のCr(VI)濃度変化や揚水によるCr(VI)回収量のヒストリーマッチングを実施することで,数値シミュレーション上での現在の汚染状況の再現を図った.マッチングプロセスでは,Cr(VI)の土壌吸着パラメータの最適化を図るとともに,帯水層へ流入したCr(VI)量を評価した.さらに,再現された汚染状況に基づき,事業所内の汚染箇所とその周辺区域における汚染の将来予測および揚水による浄化効果の定量的評価を行った.その結果,現行に対して揚水量を2倍にしても,Cr(VI)の敷地外への流出を回避することができないのに対し,汚染の拡大方向に沿って新規に複数の揚水井を設置した場合の浄化効果は非常に大きいことが判明した.