2020 年 76 巻 5 号 p. I_151-I_157
近年,気候変動の影響により局所的豪雨が頻発するようになり,貯水池内の濁度の上昇や濁水放流の長期化が問題となっている.貯水池での濁水現象は,年間湖水回転率や土砂生産量といった貯水池,集水域の特性から影響を受けるため,気候変動の影響を検討する際にもこれらを考慮することが求められる.そこで本研究では日本全国30のダム湖を対象として鉛直一次元モデルを用いた気候変動下における貯水池内濁水現象に関する将来予測を行った.その結果,気温と日射という水温成層に直接的に影響がある気象要因のみの変化では,SSの放流負荷量の増加率は1.04倍と小さいが,降水変化にともなう流量の変化を加味すると1.77倍という放流SS負荷量の増加につながることが分かった.また気温の変化にともなう,貯水池内の水温構造の季節変化に影響を及ぼし,融雪期に放流SSの増加につながる可能性が示された.