2020 年 76 巻 5 号 p. I_177-I_186
本研究は,自然環境の保全による移住者への助成金の軽減効果を便益計測の概念に基づき計測することで自然環境の保全の意義を示すことを目的として行われた.全国21大都市の居住者の中から地方部への移住希望者に対し,移住してもよいと考える移住助成金(受入補償額;WTA)の額や,自然環境を含む移住先で重視する居住環境(政策変数)を調査した.推計の結果,政策変数の中にはWTAを削減するもの/しないものがあり,削減する政策無しの場合のWTA(基準値)の中央値は約59万円/1回となった.削減効果が最も大きい政策は『住宅の質の改善』の約5.2万円,次いで『自然環境の保全』であり約3.3万円分の額を基準値から削減できる可能性が示された.