2020 年 76 巻 5 号 p. I_205-I_210
本研究では,2019年2月に設計・実施した国内の農業従事者を対象としたWebアンケートにより,全国の耕種農家における気候変動の影響と適応策への意識を抽出し,現状で行われている適応の取り組みを整理した.アンケートから得られた426件の有効回答を用いて分析を行った.
回答者の約半数にあたる215名はこれまでに温暖化による被害を受けた経験があり,「台風」や「熱波・猛暑」等の複数の自然災害に対するリスクを高く評価していた.気候変動への適応に対する認知や実践では回答にばらつきが認められ,温暖化による被害経験があるグループで対策を実践する傾向がみられた.一方,被害経験があっても適応策を実践していないグループでは実践の意図はあっても行動に結びついておらず,効果的な適応策の周知が今後の課題として挙げられた.