2022 年 78 巻 5 号 p. I_271-I_278
北海道東部の大規模酪農地帯の一部では,気候変動に伴う転作や国営環境保全型かんがい排水事業の実施により営農状況が変化している.そのため,水質汚濁物質の流出経路(表面流出,側方流出,地下水流出)の変化やそれに伴う動態変化を予測し,流域規模で水質環境への影響を定量化することが求められている.本研究では,準分布型モデルであるSWATを小流域に適用し,過去,現在,近未来の三時期の営農状況を想定した河川水質解析を実施した.シミュレーションの結果,牧草地から飼料用トウモロコシへの転作により,窒素負荷量の表面流出が増加することが示され,転作農地とその周辺に肥培かんがいによるスラリー状の液肥散布,緩衝帯としての土砂かん止林,沈砂池としての排水調整池を配置することで各流出成分が減少することが示された.